なぜアメリカは「ロシアがウクライナを侵攻してくれないと困る」のか
遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
2/20(日) 22:15

◆プーチンのウクライナ侵攻を食い止めているのは、実は習近平
 プーチンはウクライナがNATOに加盟しさえしなければ、ウクライナを侵攻するつもりなど最初からないと何度も表明している。ウクライナのゼレンスキー大統領が言っている通り、今年の軍事演習規模も、例年通りの規模で行っているだけだと主張している。
 しかし西側諸国がバイデンに歩調を揃えている(振りをしている)現在、ウクライナに侵攻すればロシアには決定的に悪影響があるのと同時に、何よりも習近平がそれを好んでないので、プーチンとしては唯一にして最大の味方である習近平の「ご機嫌を損ねる」ことになってしまう。それだけは避けなければならない。
 中露が不仲になったら、プーチンは孤立無援となって、さすがに堪えるだろう。
 だからウクライナ侵攻はしないと、ほぼ断定してもいいと思っている。
 たしかにクリミアは併合した。
 しかしあのときの習近平の力と現在の習近平の力は違うし、アメリカとのGDPの差も縮まり、軍事力もミサイルなどでは高まっている。中国の経済力無しにロシアが今後生き延びていける道はないと、プーチンは心得ているものと思う。
 その意味で、国際社会がバイデンのゲームに躍らされ国力を消耗していくのは賢明ではないと思うが、「時すでに遅し」という感も否めないではない。米軍をウクライナ周辺国に派兵したアメリカに対して、ウクライナの親ロシア派やベラルーシュなどが引こうとしない所に至っている。
 中露の動きは常に警戒しなければならないが、しかし少なくとも日本が、アメリカの戦争のロジックには嵌(はま)ってしまわないことを祈りたい。
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220220-00283005

遠藤誉

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させたケ小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。