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 ローソンが冷凍した真鯛(まだい)とカンパチの刺し身の販売を一部店舗で開始した。
特殊な冷凍技術を使って鮮度を長く保つことができるのが特長で、売り上げは好調だという。
自宅で食べる際は流水で10分ほど解凍するだけと簡単だ。
活況な冷凍食品市場における“台風の目”となるか注目が集まる。

ローソンは関東や近畿、北陸の一部店舗で2022年1月18日から、冷凍食品「カンパチお刺身」「真鯛お刺身」(いずれも税込み498円)の販売を開始した。
1枚ずつスライスされた状態でパッキングされ、解凍すればすぐに新鮮な刺し身が食べられる。
展開する店舗はまだ少ないが、売り上げの初速は好調という。
「購入層は30〜50代の男性が中心。冷凍食品やビール・酒などとの買い合わせが多く、家飲み需要にも合った一品」(ローソン)と明かす。

ローソンは21年11月、25年度の冷凍食品の売上高を、20年度比の5倍に引き上げると発表している。
背景には、コロナ禍での冷凍食品需要がある。
「料理の回数が増える」「頻繁に買い物に行けない」などの要素が重なり、手軽に食事をとれる手段として冷凍食品が受け入れられるようになった。
日本冷凍食品協会によると、20年の冷凍食品の工場出荷額(国内生産分)は、家庭用が19年比18%増の3748億円と大きく伸ばしている。

最大の特長は、特殊な冷凍技術を使ったこと。
凍結機メーカーのテクニカン(横浜市)が開発した「凍眠(とうみん)」がカギだ。
一般的な冷凍食品は冷たい空気で冷やして作るのに対し、凍眠はマイナス30度のアルコール(液体)を使用。
液体が気体よりも熱を伝えやすい性質を利用し、素早く冷凍する。

短時間の冷凍は食材へのダメージを大幅に低減する。肉や魚を冷凍すると、中に含まれる水分が氷の結晶になるが、
冷凍スピードが速いと結晶サイズが抑えられ、食材の細胞を傷つけにくい。
解凍時に、うまみが詰まったドリップが流れ出るリスクが減り、おいしさを保てるというわけだ。

買ってすぐ食べられる即食性を重視し、刺し身をスライスにしたこともポイントだが、サク(切り身)の状態より品質を維持しにくいという課題もあった。
そこで魚の産地や1枚のサイズ感、魚を締めてから何日置くかなどの条件を細かく変え、試作を繰り返して完成させたという。

■店舗と消費者の双方にメリットあり
コンビニでは今までも刺し身や握りずしといった商品の取り扱いはあるが、鮮度管理の難しさから新鮮な刺し身を置くにはハードルがあった。
今回の真鯛とカンパチの刺し身は賞味期限が半年あるため、食材が無駄になりにくい。
「店側のメリットもあるし、消費者が冷凍庫でストックしておくこともできる。結果的に、フードロス対策にもつながる」(ローソン)という。

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