<第二次大戦後、西側と旧ソ連の間の中立国として歩んできたフィンランドが、ロシアのウクライナ侵攻を見てNATO加盟を検討しはじめた。
自分もロシアに攻められ北欧に戦火を招く危険と隣り合わせだ>

フィンランドの元首相アレクサンデル・ストゥブが取材に応じ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「なだめることなどできない」と危機感を示した。
フィンランドは今、隣国ロシアから攻撃を受けるリスクを冒しながらNATO加盟を検討している。

ストゥブは、2014年から2015年にかけてフィンランドの首相を務めたほか、外相も歴任した。
スペインのニュースサイト「エル・コンフィデンシアル」の取材に答えたストゥブは、プーチンが大統領の座にとどまり続ける限り、東欧が平常に戻ることはないだろうと警告した。

ストゥブによれば、ロシア政府が何かを約束しようと、プーチンはウクライナから手を引くことはなく、世界に影響を及ぼすおそれがあるという。

「プーチンをなだめることなどできない。今さら引き返せない。我々は後戻りできる地点を過ぎてしまった」とストゥブは言う。
「停戦に向けた努力をすることはできる。だが、プーチンが権力の座から追われない限り事態が平常に戻ることはない。そして体制転換は、ロシアの内側からしか起きない」

プーチンは今、ロシアを「徹底的に、完全に周囲から孤立した国」にするリスクを冒している。
ウクライナ侵攻に対する制裁で、経済や輸出品にとどまらず、スポーツや文化、さらにはエネルギーや運輸などの分野でも孤立のリスクがある。

「ロシアは、巨大な北朝鮮になろうとしている。いかなる形であれ、この国と貿易を行ったり協力関係を結んだりしたいと思う者は誰もいなくなるだろう」とストゥブはいう。
フィンランドでも、ロシアとの貿易の10%が「一瞬で消えた」。

「ヨーロッパに住む我々はエネルギー価格の上昇という代償を支払っているが、ウクライナの人々が自由のために命を懸けていることを思えば、とても安いものだと思う」
報道によれば、フィンランドが現在、スウェーデンと共にNATOへの加盟を検討しているという。ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして、安全保障を強化する必要に迫られたためだ。

ロシアと1300キロ近くにわたって国境を接するフィンランドがNATO加盟に踏み切った場合、
西側諸国とロシアの間で中立を守ってきた第二次大戦後の同国の位置づけは正式に終わりを迎えることになる。

とはいえフィンランドは、数十年前からすでに中立地帯という立場からの脱却を始めていた。
ソ連崩壊後は欧州連合(EU)に加盟し、軍事的選択を迫られる場面ではNATOの支援に回り、今回のロシアの侵攻ではも、ウクライナに武器や弾薬を供与している。

西側の軍事同盟NATOに加盟する是非についてのフィンランド世論も、ここに来て大きく変化した。

フィンランドの放送局YLEの委託により実施された最近の世論調査では、フィンランド人の過半数が、自国のNATO加盟に賛成だと回答した。
加盟賛成が53%で、加盟反対は28%にとどまった。

ロシアはすでにスウェーデンとフィンランドに対し、両国がNATOに加盟した場合には、軍事的に重大な結果に直面するおそれがあると警告している。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/nato-34.php

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