モスクワのカスペルスキー社=ロイター
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 ウイルス対策ソフトを手がけるロシアの情報セキュリティー会社「カスペルスキー」への警戒感が欧米で広がっている。米政府は同社を「安全保障上の脅威がある企業」に指定し、排除の姿勢を強めたほか、ドイツ政府も同社ソフトの利用はリスクが高いと警告し、別の製品に切り替えるように呼びかけた。

■購入禁止

 3月25日、米連邦通信委員会(FCC)がカスペルスキーを安全保障上の脅威がある企業に指定した。ブレンダン・カー委員は「スパイ活動や国益を損ねようとするロシアの国家的支援による脅威から、通信網を保護できる」とコメントした。

 米政府はすでに2017年、政府機関での同社製品の利用を禁止している。ロシア情報機関が通信傍受の支援を強制したり、ロシア政府が製品を利用して米政府のシステムに侵入したりするリスクがあると指摘していた。

 今回のFCCの指定によって、米政府の補助金を受ける通信会社などはカスペルスキー製品の購入を禁じられることになる。「安全保障上の脅威」とみなされたことで、企業の間でも同社製品を避ける動きが広がるとの見方も出ている。

■注意喚起

 ドイツ政府の連邦情報セキュリティー庁は3月15日、カスペルスキー製品の利用に警告を発した。

 同庁はウイルス対策ソフトにはITシステムに深くまで入り込む力があることが特別なリスクをもたらしていると説明。「(カスペルスキーが)意に反してシステムを攻撃させられたり、顧客に対する攻撃の道具として悪用されたりすることがあり得る」と警鐘を鳴らした。

 イタリアのデータ保護当局は3月18日、カスペルスキーに対し個人情報の取り扱いに関する調査を始めたと発表した。データがロシアに転送されていないかや、データ処理の過程で関係国以外が接続できるようになっていないかなどを調べる。

 カスペルスキーは米国やドイツの対応に反論している。声明で「民間企業としてロシアやその他の国の政府とのつながりは一切ない」「製品の技術的評価に基づくものではなく、政治的な理由によるものだ」と述べた。

■「被害者」

 日本では、経済産業省、総務省、警察庁などが連名で3月24日に出したサイバーセキュリティー対策強化を求める文書で、ドイツ政府による注意喚起文書を参考に掲載した。サイバーディフェンス研究所の名和利男・上級分析官は同社製品について「ウイルス検知のレベルは高い」と評価した上で、「カスペルスキーではなくロシアを懸念している。ロシアの影響下にある企業は、いざとなったら国家に従わざるを得ないだろう。カスペルスキーは戦争の被害者と言える」と指摘した。

4/6(水) 5:39配信
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