15日に閉会した通常国会では、与野党は参院選に向け対決色を強める一方、国会議員に月額100万円を支給する「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や未使用分の国庫返納を巡る結論は先送りした。与野党を通して慎重論があったためで、国会議員の「第2の財布」は温存された。

 「今回の文通費、調研費の自民党の対応はひどいもんです。野党を議論の場につかせるだけつかせて結局先送り。間違いなく自民党の責任だ」。立憲の泉氏は15日、通常国会閉会を受けた党会合でこう語気を強めた。

 旧文通費問題は野党新人議員の素朴な疑問が発端だった。文通費は21年10月31日投開票の衆院選での初当選議員にも、10月分が満額支給された。これを日本維新の会の新人議員が「おかしいのでは」とインターネット上で訴えた。

 またたく間に旧文通費の使い道に事実上制限がないことなどまで注目され、旧文通費改革は21年の臨時国会や今年1月開会の通常国会での一大焦点に発展した。2月には自民▽立憲▽維新▽公明▽国民民主▽共産――の6党による協議の場が設けられ、日割り支給をやめ、実態に合わせた名称に変えることで合意。しかし使途公開を巡る議論は難航し、閉会までに合意できたのは「選挙費用は対象外」という「当たり前」(野党幹部)のことまでだった。

 旧文通費は私設秘書の人件費や事務所維持費、支援者との飲食代などに広く使われてきた実態があり、与野党を問わず多くの国会議員にとって公開したくないのが本音だった。野党第1党として6党協議をけん引した立憲も、議論の過程を公開するまでの気迫は見せなかった。

 論議の先送りが固まった14日、自民の高木毅国対委員長は記者団に「(与野党で)真摯(しんし)に議論したが結論を得ることはできなかった」と語った。

 この発言に、火付け役である維新の遠藤敬国対委員長は14日、「人を信じた僕が悪かったのかもしれないが、もうよっぽどのことがなければ付き合わない」と不満をあらわにした。維新は15日、使途公開などを義務づける独自の法改正案を国会閉会直前に提案。立憲の泉氏も国会内で首相と閉会のあいさつを交わした際に「今国会中に文通費改革をやる約束だった。責任が問われる」と迫ったが、公開が先送りされた事実に変わりはない。【東久保逸夫、樋口淳也】

毎日新聞 2022/6/15 21:03
https://mainichi.jp/articles/20220615/k00/00m/010/327000c