インターネット通販大手「アマゾンジャパン」の荷物を長崎市などで宅配するドライバー15人が、労働組合「東京ユニオン・アマゾン配達員組合長崎支部」を結成した。ユニオンが5日発表した。アマゾン関連の労働者が個人加盟する東京ユニオンでの支部組織の結成は、横須賀に続き2カ所目となる。アマゾンジャパンの下請け会社と業務委託(請負)契約を結ぶ長崎の配達員らは、なぜ労組を結成したのか。

 8月下旬、配達員の大滝孝洋さん(50)が飲料水の2リットルペットボトル8本入りのケースを担ぎ、長崎特有の急坂を駆け上がった。30度を超える蒸し暑さに汗が噴き出る。軽ワゴン車に戻ると、「ラビット」と呼ばれる業務用アプリで配達先の地図を確認して車を発進させ、路肩に停車しては坂や階段を走り、ひたすら民家に荷物を届ける。この日は朝8時半~夜7時半に約100個を配達した。

 大滝さんは2021年5月、下請け会社と請負契約を結び、アマゾンの荷物を運ぶ仕事を始めた。当初は1日に運ぶ荷物が90個前後だったが、多い時で約150個にまで増え、長時間労働を余儀なくされる日もある。しかし、大滝さんらは下請け会社から、雇用関係にある「労働者」ではなく「個人事業主」として扱われているため、残業代などは支給されていない。労災保険や雇用保険も適用されず、社会保険料の会社負担もない。

 大滝さんの場合、日当は当初から1000円上がって1万5500円になったが、配送車は自分の車を持ち込み、車の保険料や整備費、1日約2000円のガソリン代は自己負担だ。

 特にガソリン代はウクライナ情勢などで高騰し、長崎県のレギュラーガソリン1リットル当たりの小売価格は全国最高値の182・6円(経済産業省発表、8月29日時点)。1日約100キロ走行する大滝さんらは下請け会社にガソリン代の手当を求めたが、支給は月4000円程度で、実質的な減収となっている。また、配達員たちは、長崎は坂や階段が多く、車が入れない細道が多い特有の地形のため、配達の負担が大きいのに日当が低いと訴えている。

 形式的には企業が業務を委託した請負契約になっていても、企業が指揮命令している実態があれば、労働者として雇用した場合の責任や義務を逃れるための違法な「偽装請負」とみなされる恐れがある。

 東京ユニオンによると、配達員らは、下請け会社から配送センターへの出勤時間を毎朝指示され、配達終了後も再配達や、荷物が多い他のドライバーのサポートなどを命じられている。ユニオンは「アマゾンジャパンがアプリを通じて配送量や配送先を指示し、下請け会社が出勤時間を指示している実態からすれば、配達員は『労働者』だ」と主張する。

 ユニオンは、アマゾンジャパンと下請けの2社に対し、業務委託契約を労働契約に改めて労働関係法令を順守することや、適正な労働時間管理、日当の改善、荷物量の適正化などを求めていく。大滝さんは「アマゾンジャパンや下請け会社は使用者としての責任を果たしてほしい」と話す。

 全国ユニオンは11日午前10時~午後8時、アマゾンなどの配達員の相談を受ける「配達ドライバーホットライン」(050・5808・983x)を開設する。【樋口岳大、高橋広之】

毎日新聞 2022/9/5 10:54(最終更新 9/5 12:00) 1327文字
https://mainichi.jp/articles/20220905/k00/00m/020/037000c