本格的な少子高齢化時代に突入する中、政令指定都市の二極化が進んでいる。神戸市の推計人口は10月1日時点で149万9887人となり、22年ぶりに150万人を下回った。京都市でも減少傾向が続く一方、大阪市は増加。福岡市も増え続けており、地域ごとの一極集中がうかがえる。有識者は持続可能なまちづくりに向け、経済活動の拠点形成が必要だとしている。

タワマン建設は抑制
神戸市の人口減少は想定より速いペースで進んでいる。理由は出生数の低下だ。市の人口が初めて150万人を突破したのは、平成4年12月。7年の阪神大震災後に約142万人まで減少、その後回復したが、23年の約154万5千人をピークに減少に転じた。27年に福岡市、令和元年に川崎市に抜かれ、2年国勢調査をもとにした今年10月時点の推計人口は、20政令市のうち7番目に後退している。


市によると、人口が増えていた高度経済成長期以降に開発が進んだ郊外のニュータウンなどで高齢化が進んだ。若い世代が結婚や住宅購入などのタイミングで、職場に近い大阪市や阪神圏、住宅コストが抑えられる隣接の兵庫県明石市などに流出している影響もある。

さらにタワーマンションの建設が神戸市中心部で抑制されていることも人口が増えない理由の一つ。都心回帰や職場と自宅が近い「職住近接」のニーズの高まりなどを受け、各地で建設が相次ぐタワーマンションだが、久元喜造市長は「数十年すると廃虚化の可能性がある。市として目先の人口増は追わない」と規制継続の方針を強調。「市が独自に人口増を目指すのは非現実的」と述べ、郊外の再開発などで減少を抑える考えを示した。


京都市の人口減も深刻だ。10月1日時点の推計人口は144万3486人で10年前の同期比で約3万人減少。総務省の人口動態統計によると、日本人だけに限れば、市町村別の1年間の減少数が、新型コロナウイルス禍が拡大した2年以降、3年連続で全国最多となっている。

京都市には京都大をはじめトップレベルの大学や研究機関が多数あり、15〜24歳が転入超過となる傾向があったが、コロナ禍で一変した。

さらに観光都市としての構造的な問題もある。増加する外国人観光客に対応するため、ホテルの建設ラッシュが続き、用地不足に伴ってマンション価格が高騰。子育て世帯を中心とした市民が、京都市内と比べ割安感のある京都府南部や府外の大津市などに流出する事態が続いている。

一方、大阪市の推計人口(10月1日時点)は277万520人。市によると、コロナ禍の3年は落ち込んだものの、平成12年以降は増加傾向が続く。都心回帰や職住近接の需要があるほか、幼児教育の無償化など子育て支援策が支持されているとみられる。ここ数年は神戸市を含む兵庫県や京都府など関西圏からの転入が目立つといい、大阪市の担当者は「兵庫からの転入は20代が多く、就職や転勤が理由ではないか」と推測している。


福岡と川崎は好調
政令市の中で、神戸市や京都市が人口減の苦境に直面する一方、アクセスのよさや再開発の勢いに乗り、人口が増え続けているのが福岡市と川崎市だ。

前年比約1万3千人と全国首位の人口増加数を誇る福岡市は、転入超過が続く。京阪神に都市機能が分散している関西とは異なり、九州の一極集中化都市として急成長している。

賃貸住宅大手「大東建託」の今年の調査では「住んでみたい自治体」の1位となり、「ビジネス環境の良さ」に注目が集まっている。

中心地の天神エリアでは「天神ビッグバン」と呼ばれる大規模な市の再開発促進事業が進み、市は企業誘致に注力。市によると、エリア内のビル建築確認申請数は今年3月末時点で63件と再開発ラッシュで、今後新たな雇用や税収を生み出すことが期待される。

一方、東京23区への通勤・通学圏にある川崎市はアクセスの利便性から人口が増え続けている。令和12年に160万人を超え、ピークに達する見通しだ。人口に対する出生数と死亡数の差の割合を示す「自然増加率」は20政令市の中で昭和61年から36年連続でトップを誇る。

産経新聞 2023/12/3 08:00
https://www.sankei.com/article/20231203-JJPMGVBUEJODBKC3HS2QTRSWWI/