資材を積んだ大型ダンプカーに交じって、軽トラックがことこととキャベツ畑の隣の道路を走っていく。

 畑の向かい側には、真新しいガラスを光らせる大きな建物。半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が日本に初めて建設した工場だ。

 年内の稼働を予定する工場周辺では、物流倉庫や、関連企業の従業員向けの住宅需要を当て込んだ土地の取引話が引きも切らない。

 「あっちの山林6ヘクタールは、あっという間に売れてしまったと聞いた。私も、持っている土地と借りている土地あわせて7ヘクタールを半導体関連企業の用地に売ってほしいと言われている」

 熊本県菊陽町の工場にほど近い大津町で酪農を営む古庄寿治さん(68)は苦い表情を見せた。

 菊陽町や大津町を含む菊池地域は、九州の食を支える熊本屈指の農業地帯だ。

 とりわけ盛んなのが酪農で、県畜産統計によると県内の乳用牛の4割を抱える。北海道、栃木に次ぐ生乳生産量を誇る西日本一の酪農県の生産の中心を担う。

 畑には、秋になると高さ2メートルほどに育ったトウモロコシが林立する。牛の自給飼料として農家が栽培に力を入れてきた「デントコーン」だ。

牛のえさつくる畑、貸しはがしも
 ウクライナ侵攻以降の輸入飼…(以下有料版で,残り2046文字)

朝日新聞 2024年2月22日 7時00分
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