ドライバーからは恨み節?!この冬導入の雪道チェーン規制が波紋を呼ぶ理由〈週刊朝日〉
12/11(火) 14:05配信

  いよいよ冬本番。この冬から雪の多い地域の峠など一部区間の道路で、チェーン規制が導入される。大雪警報などの際に安全対策としてチェーンの装着をドライバーに義務付けるものだが、一般ドライバーの間で波紋を呼んでいる。

 従来のチェーン装着指導は「お願い」にとどまり、「チェーン装着車以外通行止」の例外的な表示でなければスタッドレスタイヤでも大丈夫だった。新たな規制ではチェーンが必須となり、国土交通省は一部での導入を手始めに適用区間を順次拡大していく方針だ。国交省の担当者は「積雪の多いところを念頭にしている」と話し、「道路法で罰則を設ける形になる」という。

 新たな規制は昨今の記録的降雪を受けたもの。車両の立ち往生が数日間に及ぶ事態も発生し、対策が迫られていた。例えば、今年1月22日には東京都心で積雪が20センチを超え、首都高速道路で約7割が通行止めとなり、通行再開に最大4日を要した。また、北陸地方では2016年1月、24時間で75センチ積もる大雪が発生。北陸自動車道は最大で約38時間の通行止めとなり、並行する国道8号で車両が立ち往生し、解消に約2日を要した。


 規制をかけるのは警報級の大雪で、縦断勾配5%以上の道路であり、過去に立ち往生が発生している区間を想定。過去の例を踏まえれば、今回の規制は妥当なものにも思えるが、一般の良識あるドライバーからは「冗談じゃない」という声が上がっている。

 というのは、実は立ち往生の原因の多くが、普通乗用車ではなく、大型車。冬用タイヤを装着していたが、チェーンを装着していない車がほとんどだったという。

 さらに、規制は雪道でのスムーズな交通を目指したものだが、逆に渋滞を招きかねないという。走行中にチェーン規制を確認すると、車を止めて装着する必要がある。さらに、例えば群馬県みなかみ町と新潟県湯沢町の10キロ超を結ぶ関越トンネルのように、長いトンネルに入る際には金属チェーンであれば外して走行しなければならない。着けたり、外したり、そのたびに車を止めて大変な作業となり、「大渋滞になって困る」というのだ。

 最近はタイヤの性能が向上していることもあり、ある自動車ディーラーは「冬道の走行にチェーンをつけなくてもスタッドレスタイヤで十分」と話している。降雪地方でも冬道はスタッドレスタイヤでの走行が一般的で、チェーンを使うことが少なくなっている。

 そもそも、今後ドライバーはチェーンを購入し、自分で着脱できるよう習熟しなくてはいけない。金属チェーンは凍結路に強く、比較的に安いが、走行時の振動や騒音が大きく、雪のない乾いた道路だとすぐ切れてしまう。ゴム・ウレタン系素材など非金属チェーンは静かで振動も少なく乗り心地がいいが、金属性に比べてかさばるという問題があり、価格もやや高い。

「規制は事故防止にはなるのかもしれないが。でも、事故を起こすのは、スタットレスだからといって、雪道で無謀な運転をするようなドライバーです。常識的な人が煩雑な作業がふえるなんて…」(50代男性)

 運転に良心のあるドライバーからは恨み節も聞こえるチェーン規制。国交省の発表によると、今年度は北陸自動車道の加賀ICと丸岡IC間、今庄ICと木之本IC間など全国で13区間を検討している。

(本誌 浅井秀樹)

※週刊朝日オンライン限定記事
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