◇「報酬は飲み代や風俗遊び、宴会にコンパニオンを呼ぶ費用」?

消火活動の実績がない消防団員に道府県庁所在地の7割の自治体が報酬(最大年5万円)を支払うなどしていた問題で、全国各地の消防団で報酬が遊興費などに流用されている実態が浮かび上がった。毎日新聞の一連の報道後、多くの現役消防団員から「告発」の電話やメールが寄せられた。一方で、「幽霊団員」や水増し請求の問題を内部告発したが、うやむやにされた上、活動禁止や嫌がらせの報復措置を受けたケースもあった。

「飲み会の資金が減るから、幽霊団員を放置している。公金の意識が全くない」。毎日新聞にメールを寄せた東京都大田区の自営業の男性(70)はそう憤る。

大田区の消防団の分団で班長をしている。14年前から消防団員だが、長年疑問に感じることがあった。辞めたはずの団員が名簿に載っていることだ。一方、都から報酬や手当が振り込まれる団員の個人口座は分団が一括管理し、飲み会や旅行の費用に使われてきた。

毎日新聞が今年5月、長期間活動していない消防団員が岡山市に多数いることを報じると、男性は所属分団(約40人)の調査を始めた。出勤名簿や団員の証言から、3年以上活動していない団員が3人いることを突き止めた。うち1人は10年以上無活動だった。分団や東京消防庁に質問状を提出した。

ところが、逆に分団から一般団員への降格を言い渡され、反省文の提出と自主退団を求められた。分団長は取材に対し、処分理由について「消防団は階級社会。勝手に動いてメンツを潰したから」と話した。活動していない消防団員には出動を促しているとし、「団員数が定員の8割を切るのはまずいので、ずるずるきてしまった」と弁明した。ただ、取材後に降格処分は撤回され、男性は年度内の活動禁止と来年度から別の団に移ることを言い渡された。

東京消防庁は「1年以上活動していない団員は退団を促すこともあり、分団に適宜指導している」とコメントした。

三重県四日市市の60代団員は5年ほど前、消火活動などに参加する団員数を分団が水増ししていることを知り、告発した。出動が多ければ、多くの手当が支給される。市は調査に入り、水増しの事実を確認。報酬の振り込みを従来の分団口座から個人口座に切り替えた。

ところが告発後、分団幹部に足を踏まれるなどの嫌がらせが始まった。この分団では、今も団員の個人口座の管理を続けている。この団員は「消防団はあまりにも低レベルで、行政は事なかれ主義。何も解決していない」と語気を強めた。【高橋祐貴】

◇寄せられた他の意見・感想

職場の上司から「名前だけでいい」と誘われて入団した。報酬や手当が振り込まれる口座を作ったが、通帳やカードを団に取り上げられた。報酬は飲み代や風俗遊び、宴会にコンパニオンを呼ぶ費用に使われていると聞き、嫌な思いをしている。=神奈川県大和市の30代男性

数年前に入団し、報酬が振り込まれる口座の通帳と印鑑を分団に預けさせられた。幽霊団員は団の3分の1くらいいて、報酬や手当は消防団の遊び代や飲み代になっている。退団を申し出たが、3年くらい認めてもらえなかった。消防団は一部の既得権益になっていて、社会的意義を感じられない。=東京都中央区の40代元団員

退団すると地域や職場で「村八分」にされる恐れがあり、辞めたい人は「幽霊団員」にならざるを得ない。年配の消防団員が甘い蜜を吸い続けている。公務員が団員を務めている例も多く、相談する場所がない。=栃木県大田原市の男性

うちの消防団にも活動に参加せず、勤続年数だけが伸びる「ペーパー消防団員」がいる。報酬はプールされて飲み代に使われ、多く飲んだ者が得をするゆがんだ状況。仕事やプライベートよりも訓練を優先しなければならないことも多く、消防団の活動の在り方に疑問を抱いている。=山形県遊佐町の団員

阪神大震災がきっかけで消防団に入り2年間活動したが、飲み会ばかり。消防団に所属する議員の政策を訴えるはがきが届いたこともあった。後援会に問い合わせると、消防団の名簿が使われていた。=相模原市の50代男性

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