居家以岩陰遺跡で人骨の発掘を行う調査団員
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 国内最古級となる約8300年前の埋葬人骨が見つかった縄文時代の居家以(いやい)岩陰遺跡(群馬県長野原町)が、考古学関係者の注目を集めている。遺跡からは人骨20体以上が見つかっているが、DNA分析が可能なほど状態は良好。考古学や形質人類学などの専門家が横断的な組織をつくり、縄文人の起源や埋葬習俗の解明に取り組んでいる。

 遺跡は「岩陰」の名称通り、張り出した岩盤下のくぼみにある。縄文時代は岩陰や洞窟が生活空間として利用されており、同遺跡からは身近な場所に遺体を埋め、死者とのつながりを大事にしたことがうかがえる。

■DNA分析

 2014年から国学院大を中心とした調査団(団長・谷口康浩国学院大教授)が発掘。今年も8月下旬から約1カ月の日程で現地入りし、地中にある約7体を精密な測量で記録している。東京大大学院の近藤修准教授(形質人類学)は「人骨の特徴やDNAを調べることで、日本人の成り立ちが分かるかもしれない」と期待を寄せる。

 年代測定を終えた8体のうち、5体が約8000年前の縄文時代早期、残る3体は約6000年前の同時代前期の人骨だった。

 20〜40歳とみられる女性の人骨は上半身と下半身が腰で切断され、骨盤の上に頭骨がのった状態で見つかった。これは縄文時代にみられた手足を折り曲げて葬る「屈葬」と異なり、特殊な埋葬法があった可能性を示している。埋葬した骨を掘り返し、あらためて埋めた形跡のある人骨も見つかった。

 谷口教授は「不思議な状況がいろいろある。縄文早期は葬制の始まりで、縄文人が死んだ人をどう扱ったか、死生観を考える材料になる」と話す。

■近親婚回避か

 成人女性の人骨と、近くにあった子どもの骨、若い成人男性3体をDNA解析したところ、近い関係にあると思われたが、母子やきょうだいといった近親関係にないことも分かった。

 谷口教授は多くの人骨を鑑定し、埋葬された集団の構成を明らかにする必要があるとした上で、「DNA解析の結果は近親間による結婚を避けていた可能性を示しているとも考えられる。縄文早期の家族や婚姻制の研究にもつながる」と指摘する。

 調査では岩陰と「前庭」部分から掘り起こした土を水洗いし、数ミリ単位の微物も回収。動物の骨や植物の種、石器、1万年以上前の土器を発見している。周辺にはまだ5カ所の岩陰がある。さらに古い人骨が見つかる可能性もあり、縄文人の起源解明に期待が高まっている。(三神和晃)

9/10(火) 6:03配信
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