10月10日、くしくも東日本大震災から8年7カ月の月命日の前日、東日本大震災の津波で死亡・行方不明になった石巻市大川小の児童23人の19遺族が市と県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷が市と県の上告を退ける決定を下した。市と県に計約14億3610万円の賠償を命じた昨年4月の高裁判決が確定した。

 市と県は昨年7月に提出した上告理由書と上告受理申立理由書で、津波被害の予見可能性を改めて否定し、ハザードマップで予見可能性を判断した過去の津波訴訟との乖離(かいり)などを指摘していた。

 原告に支払う賠償金と遅延損害金は計約20億5600万円。県が支払いを立て替え、市は来年度から10年で返済する。

 判決確定を受け翌11日、原告の遺族5人は仙台市青葉区の仙台弁護士会館で記者会見したが、笑顔を見せる遺族は一人もいなかった。「やっと終わった」という安心と、「決着まで時間がかかりすぎた」という憤りが入り交じったような表情に見えた。

 会見で原告団長の今野浩行さん(57)は「提訴から5年7カ月。遺族の負担を考えるともっと早く進んでほしかった」と心境を吐露した。

 石巻市は12月1日、市河北総合センターで説明会を開き、亀山紘市長、菅原秀幸副市長、境直彦教育長が遺族に直接謝罪した。遺族の提案で旧大川小にも足を運び、慰霊碑に手を合わせた。

 約2時間に及ぶ説明会の質疑応答では、怒りが収まらない遺族から「(震災があった)あの時から時間は止まったまま」「人災だと認めないのか」などの怒号が飛んだ。

 しかし、ここから遺族と市、県は手を携え、学校防災の見直しというミッションに取り組む必要がある。

 次女千聖さん=当時(11)=を亡くした紫桃隆洋さん(55)は「裁判中、県外の学校はマニュアル改善、訓練など防災教育が進んでいる。駆け足で8年間の出遅れを取り戻し、命を守れる学校にならなければならない」と話す。

 この判決はゴールではなくスタートだ。市と県、遺族がこれから目指さなければならないのは、子どもたちを確実に守れる実効性のある防災。災害に襲われた恐怖、教訓を生かし、次代を生きる子どもたちにつないでいくことである。(斎藤大輝)

2019年12月27日 金曜日  河北新報
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