ご飯のおともとして愛されてきた梅干しの消費が振るわない。1世帯あたりの年間支出額は近年のピークにあたる平成11年から減少傾向が続いている。若者が好まなくなったことが原因とみられ、世帯主が29歳以下では過去20年で半分近くに激減。70歳以上と比較すると5倍以上の差が生じている。梅収穫量全国一の和歌山県も例外ではなく、若者らに質問すると、「酸っぱいのは苦手」などという声が相次いだ。(張英壽)

 ■和歌山でも「嫌い」

 和歌山市中心部のJR和歌山駅前。3月上旬、若者を中心に「梅干しが好きか」と質問してみた。

 「嫌いです。食感が好きではないし、酸っぱいのがいや。小さい頃、食べたけど、それ以来口にしていない。家族は好きだけど、自分は食べません」

 市内に住む20代後半の会社員女性はこう言い切った。

 ここまで「嫌い」とはっきり断言した回答は少なかったが、梅干しの強い酸味に拒否感を示す声は複数あった。

 市内のフリーターの女性(21)は「好きでも嫌いでもない」と答えたものの、「食べるのは月に1回くらい」で、「家で常備しているけど、酸っぱいのが苦手。自分からはあまり食べない」。

 「好き」と回答した市内の男子大学生(22)もよく聞いてみると、「食べるのは弁当に入っているのを週1回ぐらい。酸っぱいのは苦手で、梅干しは、はちみつが入っているのがいい」という。

 一方、和歌山県海南市の男性会社員(45)は「好きで、毎朝食べる。ないと物足りない」と強調したが、「高校2年の娘は酸っぱいのはあまり食べない」と打ち明けた。

■酸味は世界一?

 総務省(旧総務庁)の家計調査によると、1世帯(2人以上)あたりの梅干しに対する年間支出額は、昭和60年の879円から62年に千円を突破、平成11年には近年のピークとなる1897円に達したが、その後減少傾向に転じた。ここ数年やや持ち直したが、昨年は再び前年を下回り、1474円に落ちた。

 和歌山県は、梅収穫量が昭和40年から昨年まで55年連続全国1位で、日本全体の約65%を占める「梅王国」だ。梅干し支出額を都道府県庁所在地と政令市別でみると、和歌山市は昨年、全国1位の3168円で、2位のさいたま市より千円以上多く、他都市を圧倒している。

 その和歌山市も支出額は減少傾向にあり、平成19年と21年には5千円、27年も4千円を超えていたが、28年〜昨年は3千円前後の状態が続いている。

 梅干しの全国製造量を示す統計はないとされるが、「梅王国」の和歌山県が最多とみられる。梅産地の同県みなべ町と隣接する田辺市で多くが製造され、両市町には梅の担当部署がある。

 梅干しの消費の落ち込みについて、3月末まで田辺市梅振興室長を務めた廣畑賢一・商工振興課参事は「高齢者は好んでいるが、若者が食べないのが大きい。梅干しの酸味は強く、世界で一番酸っぱいかもしれない。若者は辛さには強いかもしれないが、この酸味は苦手」と指摘する。梅干しの酸っぱさはレモンとともに最高レベルという。

 世帯主の年齢層別に全国の梅干し支出額をみると、昨年は29歳以下が369円だったのに対し、70歳以上が5・5倍の2012円で、12年からの過去20年で両世代間の差が最も大きい。しかも29歳以下の支出額は12年(694円)の半分近くにまで激減した。30代も12年の半分近い617円にまで減っている。

■はちみつや黒糖入りも

 田辺市やみなべ町では最高品種とされる「南高梅(なんこううめ)」を用いた梅干しがつくられているが、実は、昭和50年代から塩分や酸味を抑制、カツオだしやシソなどを加えた「調味梅」が主流となっている。本来の梅干しは「白干し梅」と呼ばれ塩分が20%以上だが、こうした調味梅では10%未満だ。廣畑参事は「食の多様化や健康志向の高まりで、梅干しにマイルドさが求められるようになった」と話す。


4/12(日) 11:00配信 全文はソース元で
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200412-00000506-san-life
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200412-00000506-san-000-view.jpg