2月15日、日経平均株価の終値は、前週末比564円08銭高の3万84円15銭とバブル経済期の1990年8月2日以来、約30年半ぶりに3万円の大台に乗せた。年初には2万7258円をつけ、年内には3万円の大台に乗せると言われていたが、早くも実現した。

株高バブル崩壊のトリガー「アメリカの金利上昇」に要注意

 庶民の間ではコロナ不況でとても景気がいいとは感じないが、なぜ株価だけは上昇しているのか。政治経済評論家の植草一秀氏に聞いた。

■東アジア市場はすでにコロナ前を上回る

「マクロ的にみれば日経平均3万円は不自然ではありません。コロナの暴落幅に対するその後の株価の反発率をみると東アジアが突出して大きいんです。中国、韓国は200%を超え、下落の幅の2倍以上上昇しています。日本は180%くらいなので東アジアのなかでは出遅れている方です」

 2020年最安値と直近値を比較すると、韓国の韓国総合株価指数(KOSPI指数)は1500から3150、中国の上海総合指数は2646から3655に、台湾の台湾加研指数が9218ポイントから15802ポイントをつけている。

 日本の場合、2019年末の日経平均は2万4044円だったが、20年3月19日には1万6538円へと暴落していた。

■過剰流動性相場に巨額財政出動

「株価が上昇している最大の理由は過剰流動性です。M2というマネーの指標がありますが、M2が10%近い伸びになっています」

 過剰流動性とは大幅な金融緩和によって、市場にある通貨が正常な経済活動を上回っている状態のことだ。

 また、金融機関から経済全体にお金がどれくらい供給されているかを見る指標にマネーストックというものがある。そこではM1、M2、M3などの指標が使われる。M1は現金通貨と預金通貨、M2はM1+準通貨+CD(譲渡性預金)を指す。2020年5月以前には3%台だったM2は、コロナ禍で急激に増え続けている。

「この数字はバブル期(1986年から1991年頃)以来なんです。バブル崩壊後、黒田日銀が金融緩和をやってもマネー残高そのものは増えなかった。せいぜい4%台だったんです。それが今回10%近くまで伸びているのは、実質無担保無利子の融資が無制限に出ていて、コロナマネーが激増しているからです。それが株価を押し上げているんです。もう一つの要因は今年度の補正予算で真水で追加した73兆円という巨大な財政出動ですね。その分GDP(国民総生産)がかさ上げされています」

 黒田バズーカでも動かなかった市場が、コロナマネーで動いたというのだ。

「もう一つ注目すべき指標はPER(一株あたりの株価収益率)です。日経225銘柄の平均PERを見ると、過去の推移からしても高いのですが、ひじょうに割高というわけではなく、企業利益からすればそれほど不当な水準ではありません。これは世界的な流れでもありますが、日本の場合は特に過剰流動性バブルが生じていることがあるわけです」

■財政出動は誰のため

 しかしながら、一般人の間では不況感はぬぐえない。

「問題は政策が本当にコロナで困っている人には手が届かずに、73兆円の財政出動もGoToのような利権まみれのところに手厚く集中して投下されています。政府はこれだけのことをやりながら、国民に安心を与えるということができないのが最大の問題だと思います」

 金持ちが富めば、低所得者も恩恵にあずかるというトリクルダウンは幻想だということはもはや明らか。株が上がろうが関係ない人がほとんど。庶民が安心して暮らせる経済政策が必要だ。(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)

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