和歌山市の老舗酒屋「松尾酒店」で今春発売された日本酒「高垣」が、人気ゲームに登場する「高垣楓(かえで)」という“和歌山出身”の女性キャラクターと同名ということでネット上で話題を呼び、飛ぶように売れている。店にはほかにも、このゲームのキャラクターと似た名前の日本酒が幾つかあり、多くのファンが来店。聖地巡礼ならぬ“清酒巡礼”として話題だ。店側はゲームのことは知らずに命名したといい、「偶然の一致」がネットを通じアニメファンを引き寄せた形だ。

 和歌山市のシンボル、和歌山城から西に歩いて20分ほどの閑静な住宅街。松尾酒店はその一角にあり、約25平方メートルの店内に酒類がところ狭しと並ぶ。「高垣」はレジ近くに、高垣楓のフィギュアとともに置かれている。

 「高垣」は、和歌山県有田川町の酒造メーカー「高垣酒造」と同店がコラボレーションしたプライベートブランド(PB)の日本酒として4月に発売。同店だけで売っており、一升瓶で税込み2592円。名前は高垣酒造から付けたもので、関係者はゲームやキャラクターのことは知らなかったという。

 このゲームは「アイドルマスターシンデレラガールズ」(通称デレマス)といい、アイドルの卵をトップアイドルに育てるシミュレーションゲーム。平成23年に配信が始まり、ダウンロード数は500万を超えた。そこに登場する「高垣楓」は「和歌山出身、日本酒好きの25歳」という女性キャラクターで、同ゲームのファンの人気投票でもトップだ。

 日本酒はその高垣楓と同名。しかも和歌山、日本酒というキーワードも重なり、インターネットやSNSを通じて注目され、全国のファンが続々と同店を訪れるようになった。店主の松尾全起(まさき)さん(58)は「なんでか知らんけどよう売れるなあ」と思っていたという。

 6月14日の高垣楓の誕生日を迎えると、「高垣」の人気はさらに加速。現在、店のネットショップでは出品から2、3時間以内に売り切れる状態。年間売り上げは当初90本の予定だったが、10月時点で約500本と驚異的なペースになっており、今年の製造分は残り100本程度という。

 松尾さんは「『よう売らんかったらどうしよう』と話していたのが、(売れすぎて)調整しないと在庫が足りない状態になるとは…」とうれしい悲鳴をあげる。

 同店では、「高垣」以外の日本酒もデレマスファンの注目を集める。その一つが高垣酒造が製造した甘口の日本酒「喜楽里(きらり)」。女性も飲みやすいようにサイダーなどで割って飲むことができる種類もある。

 同酒造9代目杜氏(とうじ)の高垣任世(ひでよ)さん(52)と夫で8代目杜氏の故・淳一さんとの結婚式で、「酒所として決して有名ではない和歌山で、小さくても『きらり』と光る酒蔵を目指してほしい」と話した仲人の言葉が名前の由来だ。

 しかしこちらも偶然の一致だが、デレマスの人気女性キャラクター「諸星(もろぼし)きらり」と同じ名前で、高垣人気とあいまって一緒に買い求める人が増加。店にはファンにより諸星きらりのフィギュアも置かれている。

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今秋、「高垣」「高垣楓」だけでなく、「喜楽里」「諸星きらり」も一角に加わった=10月、和歌山市
http://www.sankei.com/images/news/171109/wst1711090002-p1.jpg
高垣酒造
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高垣酒造」の酒蔵のタンクには「もやしもん」の作者、石川雅之さんの直筆イラストも描かれている
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