2018年11月14日 6時0分
日本農業新聞

 酪農家の減少に歯止めがかからない。2018年度の戸数は、全国で1万5700戸と10年ほどで約1万戸が廃業した。相次ぐ国内市場開放による将来不安や、高騰する設備更新費用などが引き金となり、苦渋の決断を強いられている。生乳生産量の5割強を担う北海道は、農家戸数減を規模拡大により補い、生産基盤を何とか維持する。戸数減を食い止め維持・発展させるには、後継者や担い手の営農意欲を高める対策が急務だ。

 市町村で全国一の生乳生産量を誇る北海道別海町。乳牛170頭を飼う山賀秀一さん(38)は今春、牛舎や設備を新設し、規模拡大した。2年ほどで更新前の2倍超の270頭にする目標だ。

 きっかけは老朽化。祖父の代から50年近く使った牛舎は、限界を迎えていた。深刻な人手不足の中、省力化も課題だった。夫婦二人で管理できるよう、フリーストール牛舎を建て、搾乳ロボットを導入した。

 畜産クラスター事業を活用したが、それでも資材費や建設コストの高騰により、自己負担額は2億円を超えた。25年ほどかけて返済する計画だ。山賀さんは「投資額は膨大で、軌道に乗るまで不安は尽きない。離農するか、莫大な負債を抱えて投資をするか、選択を迫られている中小規模の酪農家は多い」と訴える。

 酪農王国といわれる同町でも、離農に歯止めがかからない。同町によると、18年の搾乳戸数は663戸で、毎年20戸ほど減少。一方、生乳生産量は、過去10年ほど46万〜48万トン台の水準を維持する。1戸当たりの頭数増で、離農者の減少分をカバーする状況だ。
地域経済直結 中小酪農守れ

 日欧経済連携協定(EPA)や、米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)などの交渉合意は、将来の大きな不安だ。酪農が農業産出額の9割以上を占める専業地帯なだけに、戸数減は、地域経済に直結。酪農だけの問題ではない。

 地元のJA道東あさひは「生乳生産を支えているのは、中小規模の酪農家。生産意欲を高めて酪農を続けられるよう、乳価の安定や恒常的で柔軟な支援施策が必要だ」(営農部)と強調する。

 北海道地震後に発生した大規模停電(ブラックアウト)は大きな教訓を残した。根室地方の生乳廃棄量は約5500トンに上った。災害リスクの見直しが急務の課題だ。

 JAは地震後、酪農家への発電機導入経費の助成を決定。これまでにJA分だけで100戸以上から申し込みがあった。発電機の普及率は現時点で6割以上になる見込み。コストの問題も浮上する。(川崎勇)

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