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キャッシュレス化進む米首都ワシントン、取り残される低所得層
2018年11月25日 10:00 
発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 ]

【11月25日 AFP】夏から秋へと季節が変わり始めた頃、米首都ワシントン市内のバス停に「バス料金のキャッシュレス化、あなたの意見は?」と書かれた紙が張り出された──。

 市内の一部飲食店や売店は、すでにキャッシュでの取引をやめた。国内各地で注目を集め始めているキャッシュレス化の取り組みが、首都でもみられるようになってきたのだ。

 フランスのITコンサルティング会社キャップジェミニ(Capgemini)と仏銀行大手BNPパリバ(BNP Paribas)が10月発表した「2018年世界決済レポート(World Payments Report)」によると、キャッシュレス化の流れはすでに世界中で広まっているという。

 2015〜16年のキャッシュレス決済件数は4830億件だった。2021年までは、この数字が毎年13%ずつ大きくなっていく見通しだ。

 米国は、新しい決済手段の導入で後れを取ることが多い。しかし今回、首都ワシントンの小売業者もキャッシュレスの決済に前向きになり始めた。

 ワシントン首都圏交通局(WMATA)は、現金のやり取りが時間の無駄につながるとの考えに基づき、効率性の観点から現在、キャッシュレス決済の導入について検討していることをAFPの取材に明らかにした。

 だが、ジョージタウン大学(Georgetown University)マクドノー・ビジネススクール(McDonough School of Business)のジェームス・エンジェル(James Angel)教授は、鍵となるのは、費用とセキュリティーだと述べる。「(キャッシュでのやり取りは)交通機関にとっては高くつく。数えなければならないし、紛失の心配もある。従業員の身の安全の確保もしなければならない」

■キャッシュレス化で取り残される人々

 企業は、キャッシュレスで利益を得るが、消費者に隠れた費用負担はあるのだろうか?

 手数料や技術インフラ整備などの費用は、消費者が負担することになるとエンジェル氏は指摘する。これについて同氏は、キャッシュレス決済から取り残される人々への倫理的配慮にも注意が必要と述べる。

 ワシントンので働くブルーカラーの30代男性は、AFPの取材に「クレジットカードを持っていない人を隔離するようなものだ」と述べ、キャッシュレス化について消極的な考えを示した。

 連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)の統計によると、米人口3億2500万人超のうち、銀行口座を持っていない人は1300万人に上る。また、銀行口座を持ってはいるものの、小切手換金業者や郵便為替などノンバンクのサービスを利用している「アンダーバンク」と形容される人々も全人口の18%を占めている。

 この数値をワシントンのケースに当てはめると、銀行口座を持っていない世帯は3万7000世帯、アンダーバンクでは7万2000世帯となる。小売業がキャッシュレス化されると、首都だけでもこれだけの世帯が取り残されることになるのだ。
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