埼玉県熊谷市で2015年に男女6人が殺害された事件で、妻と娘2人を亡くした遺族の男性(45)が、県警が不審者情報などを周辺住民に提供していれば被害を防げた可能性が高いとして、県に約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が30日、さいたま地裁(石垣陽介裁判長)で開かれた。県側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

刑事裁判の1審判決などによると、強盗殺人罪などに問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(33)=1審で死刑判決、控訴中=は15年9月13日、住居侵入をしたとして任意同行された熊谷署から逃走。翌14日に住宅で50代夫婦を殺害し、15〜16日に別の家で女性(当時84歳)を、16日に男性宅で妻加藤美和子さん(同41歳)、長女美咲さん(同10歳)、次女春花さん(同7歳)を殺害したとされる。

訴状や県警の検証報告書によると、県警は14日午後に起きた夫婦殺害事件の発生を同10時45分に報道発表。翌15日午前1時39分、被告を参考人として全国の警察に手配した。同日午前7時から夫婦殺害事件の現場周辺を警戒し、最大約90人の警官を投入するとともに、熊谷市教委に小中学校での集団登下校を依頼するなどした。

しかし、男性はこうした対応だけでは不十分だったと主張。逃走したことや、被告を全国手配したことなどを防災無線やパトカーによる巡回などで周辺住民に知らせていれば、住民は危険な事件が身に迫っている可能性を把握できたはずで、16日の妻子3人の被害も防げた可能性が高いとしている。県警は、被告が熊谷署から逃走した事実を知られたくなかったため、あえてこの情報を公表しなかった可能性が高いとも指摘する。

男性は「自宅付近に凶悪事件の容疑者がいると分かっていれば、仕事を休んででも家族を守ることに徹したと思う。訴訟で真実を明らかにしたい」と話している。

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