市場調査や街頭アンケートなどを基にしたデータは、果たして信用できるのか。長野県立大学の田村秀教授は「アンケートの中には無茶苦茶なものも少なくない。国連という権威ある機関に関わる人間さえ、出所のはっきりしないデータを引用することがある」と指摘する――。


■国連特別報告者の発言に外務省が抗議

 アンケートの中には、フェイクニュースと言ってもいいくらいに、無茶苦茶なものも少なくありません。そのようなデータの信ぴょう性を検証するに当たっては、その出所がどこなのかについて必ず確認すべきです。出所が明らかでなかったり、分析がいい加減だったりするアンケートの結果が独り歩きすると、とんでもないことになってしまいかねません。しかし残念ながら、繰り返し同じようなことが起きています。

 「日本の女子学生の13%が援助交際を経験」

 これを聞いて、ショックを受けた人も少なくないでしょう。それも国連の特別報告者が発言したとなれば、本当なのだろうと思ってしまっても無理もない話です。しかも当初は通訳のミスで、13%を30%と訳してしまったというおまけつきでした。しかし、その後の報道で、これが根拠のないデータであることが明らかになったのです。

 この発言をしたのは児童売買や児童ポルノなどに関する国連特別報告者で、オランダ出身のマオド・ド・ブーア・ブキッキオ氏でした。2015年、日本の児童ポルノなどの状況を視察するために来日し、東京都内で開いた記者会見での発言で、これを受けて外務省は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に数値の根拠を開示すべきだと抗議しました。
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■裏付けのないデータを使って何がしたかったのか

 これに対しOHCHRは、数値は公開情報から見つけた概算であり、緊急に対応すべき事象だという点を強調するために言及したと釈明する声明を出しました。果たしてどっちが正しいのかと思ってしまいそうですが、外務省は数値の根拠が明らかになっていないことから、国連の肩書きを持つ者が発言することで事実かのような誤解を生むとして、改めて発言撤回を求めました。

 当然のことながら、データの根拠を示すことは、データを使う側として最低限のエチケットのようなものです。実際、菅義偉官房長官は記者会見で、特別報告者本人から「13%という数値を裏付ける公的な最近のデータはなく、誤解を招くものだった」との主旨の書簡が日本政府に届いたことを明らかにしました。また、政府としては引き続き客観的データに基づく報告書作成を求めていく姿勢を示しました。

こんなことが許されていいのかと思ってしまいますが、官房長官が言うように、客観的データを示すことはどんな場合であっても必要不可欠です。アンケート結果と思しきデータの出所がはっきりしないようなものを、国連という権威ある機関に関わる人間が軽々に使うべきではないことは明らかですが、この報告者はいったい何がしたかったのでしょうか。日本の評判を単に貶(おとし)めたいと思っていたとは考えにくいですが、やっていることはまさにそのような卑劣なことです。

■「20代男性の40%が性交渉経験なし」は本当か

 「若い男性が草食化している」などと言われて久しいですが、「20代男性の40%がセックス経験なし」というニュースも、インターネット上などでかなりの反響がありました。「そんなに多くの男性が? 」と思う人も少なくないでしょう。

 この報告は、性教育や不妊相談を手がけている民間の日本家族計画協会が、2013年に発表しました。実際の調査結果に関するレポートは、「第二回ジャパン・セックス・サーベイ」としてまとめられていて、全国の満20歳から69歳の男女を対象に、インターネット・リサーチを実施しています。調査配信数は10万6871人で、都道府県間の比較を行うために、47都道府県から回収順にしたがって均一に107サンプルを収集して、合計5029人を集計対象としています。

 20代男性の40%が「ない」と回答しているというのは、20代女性で「ない」と回答した21%の2倍であり、30代男性で10%、30代女性で7%と差は縮まり、それより上の年代も男女差はあまりなかったとされています。

続きは↓で 12/12(木) 11:15配信 PRESIDENT Online
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