新型コロナウイルス感染拡大の状況やその対策は、国・地域ごとに大きく異なる。日経BPの4つの海外支局が、お互いに疑問や質問を投げかけてみた。今回は中国・上海支局が答える。

Q1 中国の新型コロナウイルス封じ込めのための行動指針とは。社会主義は感染症に強いといえるのか。

A マスク着用や対人距離の確保、手洗いの励行など、市民の自発的行動として求められる内容は日本と中国で大差ない。中国国内では市中感染がほぼゼロとなっている地域が多く、こうした行動が実行されていないケースも少なくない。

ただし、公共交通機関などではマスク未着用の人に対して、係員が大声で注意を促す光景はよく見られる。中国の国土は広く、都市によってもどこまで市民が順守しているかは大きく異なっている。

中国の権威主義的な体制が、新型コロナウイルスの流行を封じ込める上で有利に働いた面はある。ただし、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、中国は世界保健機関(WHO)から対応の遅れを批判され、コロナでも初動の情報公開の遅れが指摘された。権威主義体制では政権の思惑通りの施策が迅速に実施できるが、それと市民のメリットが一致しない場合の副作用の大きさには留意する必要がある。

市民の合意を基礎とする民主主義の政治体制を持つ国や地域では、ニュージーランドや台湾が封じ込めに成功したと評価されている。

感染症対策の成否は、科学に即した合理的な対策が講じられたかが大きな要因になる。まだ結論づけるのは早いが、今回のコロナ禍においては政治体制やイデオロギーの違いよりも、各国・地域の統治の仕組みが機能したかが結果を左右していると考える方が正しいかもしれない。

■武漢ウイルス研究所説は明確に否定

Q2 中国は新型コロナウイルスの感染源について、どのように考えているのか。

A 当初、中国国内でも武漢市の生鮮市場がコロナの発生源ではないかという説が有力だった。そのため、中国政府も野生生物の食用を禁じるなどの対策を実施していた。

ただし、トランプ米大統領が中国をウイルス発生国と決めつけて非難したことに中国政府が強く反発。現在、中国政府は新型コロナウイルスの発生地は科学的調査によるべきだとして、中国が発生国であるという説を認めていない。中国科学院の武漢ウイルス研究所が起源という説については明確に否定している。

WHOは今年5月、新型コロナウイルスの発生源や感染拡大について、中国に国際的な調査チームを送ることで調整していると発表したが、現時点では実現していない。

■日本は依然として「行きたい国」上位

Q3 往来が可能になったら中国人観光客はまた海外旅行に繰り出すのか。

A 中国政府によれば、今年の国慶節連休(10月1〜8日)の国内旅行者は前年同期比79%の延べ6億3700万人、国内観光収入は同69.9%の4665億6000万元(約7兆4000億円)だった。コロナ対策で観光施設に入場制限をかけていたといった要因もあるが、まだ旅行需要が完全に回復したとはいえない。

ただし、日本は中国のアンケートでも「行きたい国」ランキング上位の常連であり近年、対日感情は好転している。今年は各地で日本街が建設されたり日本祭りが催されたりするなどの動きが活発だった。

中国国内でこうした「疑似インバウンド消費」が堅調であることは、コロナが収まればまた海外旅行をしたいと考えている中国人の多さを示唆している。

以下ソース先で

2020/12/1 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66715920X21C20A1000000/