飛鳥時代にブタは普段から食べられていたらしい。奈良県立橿原考古学研究所(橿考研)が藤原京(694〜710年)にあった便所の遺構を発掘すると、豚肉を食べると感染する寄生虫の卵が見つかった。卵は豚肉食の科学的な証拠だといい、国内最古級の発見例という。渡来人が常食した可能性があるとみている。

 橿考研は2018年度、奈良県桜井市の藤原京跡の発掘調査を行い、藤原京の中枢部にあたる藤原宮跡の北東で便所遺構を検出した。橿考研共同研究員の奈良教育大・金原正明教授(環境考古学)と、一般社団法人文化財科学研究センター代表理事で妻の正子さんが土壌を分析した。

 金原教授らによると、土壌から発見されたのは、豚肉を食べて感染する寄生虫(有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう))の卵とみられる。サナダムシの一種で卵殻の状態で5個検出された。橿考研が00年度に行った藤原京の調査では、飼育された可能性があるイノシシかブタの骨が見つかっていたが、有鉤条虫の卵は確認されなかったという。

 同様の寄生虫の卵は、「古代の迎賓館」と呼ばれる鴻臚館(こうろかん)跡(福岡市)や秋田城跡(秋田市)の便所遺構からも見つかっている。ともに奈良時代のものとみられ、飛鳥時代の藤原京で見つかった卵よりも後の時代になる。

 また、弥生時代の遺跡からブタとみられる骨が見つかった事例もあるが、寄生虫の卵の発見は豚肉食のより直接的な証拠となるという。金原教授は生に近い状態で豚肉を食べ、寄生虫の卵が排泄(はいせつ)されたとみている。日常的に使われた便所跡で卵が見つかったことから、常食したと考えられるとする。

 日本最初の本格的な都城とされる藤原京が造営される少し前の7世紀後半、朝鮮半島では百済や高句麗が相次いで滅んだ。多くの人々が日本列島に渡ってきたと考えられている。金原教授らは、豚食文化のあるこうした人々が藤原京でブタを食べていた可能性があると考えている。

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2021年5月22日 16時00分