「分かりにくい」。立憲民主党の枝野幸男代表の発言や政治姿勢について、こう思っているのは決して、私だけではなかったようだ。

 6月15日、野党が提出した内閣不信任決議案の趣旨弁明で、枝野氏は「国会と国民の理解を得ながら、税率5%への時限的な消費税減税を目指す」と表明した。

 枝野氏の発言は、共産党や国民民主党などの主張と一致し、次期衆院選に向け、野党共闘を前進させるものと受け止められた。

 ◆分かりにくい
 ところが、枝野氏は発言直後、記者団に「選挙公約ではない」と述べた。真意を聞かれても「一部分だけ切り取られて扱われても困る」と説明を避けた。

 立憲民主党内の意見は割れたが、消費税減税はあくまで「目標」として、選挙公約に掲げる方向になった。

 党関係者によると、「仮に衆院選で野党が勝利しても、参院は自民党多数だから減税法案は成立しない。だから公約に消費税減税を『目指す』とは書くが、『5%に下げます』とは書かない」という。

 枝野氏は現実主義者(リアリスト)だと自任し、「公約の実現性」を重視する。

 旧民主党政権最大の失敗は、実現できないことを公約し、国民の期待を高め、実現できずに失望させたことだとみている。だから、消費税減税も「選挙公約ではない」と言いたかったのか。

 それは党内からも「分かりにくい」と批判された。枝野氏は6月25日、記者団に「趣旨弁明で訴えたことは当然、政権選択の選挙で約束する政策として示される」と、消費税減税を衆院選公約にすると明言した。最初から、そう言えば済む話だったのだ。

 ◆記者の質問に「本を読んでください」
 枝野氏が5月20日に刊行した「枝野ビジョン 支え合う日本」(文春新書)。この新著の内容をめぐり、記者会見で説明を拒否する場面があった。

 西日本新聞のサイトに掲載された「枝野さん、せっかくの本を、説明から逃げる道具にしないで」(5月28日)という担当記者の記事によると、政策の財源問題で国民にお願いする具体的な「負担」について質問され、枝野氏は「本を読んでください」と繰り返した。

 動画でこのシーンを確認した。懸命に質問を重ねる記者に対し、枝野氏は笑みを浮かべながら回答を拒んでいた。

 安倍晋三前首相は、2017年に国会で憲法改正に関する見解を問われ、「(インタビューが掲載された)読売新聞に書いてある。ぜひそれを熟読していただきたい」と答えた。

 枝野氏は記者会見で「(国会の)議事録を読んで」と答えたこともあったそうだ。いくら笑顔を見せられても、枝野氏の姿勢は記事が指摘する通り、安倍氏に「似ている」と言える。

 菅義偉首相も記者会見や国会で、質問にきちんと答えないことが目に付くが、これでは枝野氏も安倍、菅両氏と本質は変わらないではないか。

 説明責任を果たそうというマインドが欠けているのだ。「ブルータス、お前もか」といった言葉を思い出す。

7/4(日) 9:07 時事通信
https://news.yahoo.co.jp/articles/cca12e1d8a79191f788a8f4c4e768ecedc43b2dd