東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約を巡る汚職事件で、AOKIホールディングス(HD)から計5100万円の賄賂を受領したとして、受託収賄の疑いで逮捕された電通元専務の高橋治之容疑者(78)。「週刊文春」の取材に、組織委員会会長だった森喜朗氏との親密な関係を明かしていた。

 8月17日、東京地検特捜部に逮捕された高橋容疑者。司法担当記者が解説する。

「高橋氏が代表のコンサル会社『コモンズ』は、AOKIホールディングス側から、五輪のスポンサー選定などを巡る依頼を受けた見返りとして、2017年10月から今年3月にかけて5100万円を受け取った疑いがあります。組織委理事は『みなし公務員』と規定され、職務に関する金品の受け取りが禁止されている。AOKI創業者の青木拡憲氏や弟で前副会長の青木寶久氏、専務の上田雄久氏も贈賄容疑で逮捕されました。高橋氏は『五輪とは関係ないコンサル料』と容疑を否認し、青木氏らも容疑を否認しています」

 高橋容疑者は1967年に電通に入社。主にスポーツビジネスに携わり、2002年のサッカー日韓W杯の実現などに尽力した。2007年に電通専務などを経て、2011年に電通顧問を退任し、コモンズ代表に就任。大会招致委員会のスペシャルアドバイザーとして、IOC委員らへのロビー活動などを担っていた。

 2013年9月、東京五輪の招致が決定。2014年1月に大会組織委員会が発足し、同年4月、電通がマーケティング専任代理店に指名される。同年6月、高橋容疑者は組織委員会理事に就任。理事の定員は35人だが、高橋容疑者は「35人目の理事」だった。

 高橋容疑者が「週刊文春」の取材に応じたのは、2016年12月21日のことだった。

 組織委員会の理事に就任した経緯については、次のように語っていた。

高橋容疑者が取材で繰り返し語っていたこと

「電通を(専任代理店に)指名したでしょ? それが決まってからじゃないと、あたかも僕が運動して電通にしたみたいに(思われる)。公平性を欠くから。それで決まってから(理事になった)。その前から森さんからも竹田(恒和=JOC前会長)さんからも『理事になれよ』と言われていたけど」

 高橋容疑者が取材で繰り返し語っていたのは、大会スポンサーの「1業種1社」原則の撤廃だった。

「僕が電通に『そういう考え方にしなきゃだめだよ』と。電通は『組織委員会やIOCがノーと言ったらできませんね』と。(高橋容疑者は)『そんなことは言わせない』と。森さんを説得し、IOCを説得し。そういうことをしないと金なんか集まらないよ」

 そして、高橋容疑者は以下のように続けた。

――森さんはそうした提案(「1業種1社」原則の撤廃など)には柔軟に対応する?

「柔軟。あの人は知識がないから。その分野の。それは僕に任せた」

――マーケティングやスポンサー関連に関しては高橋さんにお任せしている。

「僕を含めて電通に任せてる」

 一連の発言は、高橋容疑者の許可を得て録音し、音声データとして残っている(音声は「週刊文春 電子版」で公開)。

 森氏に事実関係の確認を求めたところ、弁護士名で以下のような回答があった。

「(高橋氏にスポンサー集めを一任したことなどは)事実ではありません」

 電通は以下のように回答した。

「捜査に支障をきたす可能性があるので、回答を控えます」

 8月23日(火)12時配信の「週刊文春 電子版」および8月24日(水)発売の「週刊文春」では、約80分に及ぶ音声に記録された発言の詳細のほか、高橋容疑者が逮捕直前に約3時間にわたって記者に語った内容、高橋容疑者の人物像や経歴、森氏がAOKI側が経営するカラオケ店を利用した経緯などについて詳報している。

 また、「週刊文春 電子版」では、高橋容疑者の音声を公開している。

https://bunshun.jp/articles/-/56832?page=1