読売新聞 2023/8/24(木) 12:12
https://news.yahoo.co.jp/articles/08773835a60a399e4f1c5d841bb94ea37b1864f2

山口県内で建設業界の人手不足が深刻化している。さらに業界内の時間外労働(残業)の規制が強化される「2024年問題」の影響で、労働力の減少に拍車がかかるとみられ、工期の遅れや入札の不成立が懸念されている。
こうした状況を受け、山口県や山口県建設業協会はPR活動に力を入れ、人材確保に躍起となっている。(小林隼)

「うわぁー、ショベルカーがいっぱい」
「あのトラック、大きいね」。

7月下旬、山口市の工事現場で開かれた見学会。ヘルメット姿で参加した小学生ら約40人が歓声を上げていた。

建設業に関心を持ってもらおうと県が主催した。重機の試乗や掘削作業の実演が行われると子どもたちは大はしゃぎ。
山口県防府市立富海小2年の児童(7)は「建設の仕事も面白そう」と目を輝かせた。

県によると、建設業界の就業者数は2020年に5万4767人。1995年の9万1606人から四半世紀で約4割減少した。一方、今年1月時点の有効求人倍率は6・76倍で人手不足が際立っている。

また、20年の就業者を年齢別にみると、55歳以上が2万1243人で全体の4割近くを占める。29歳以下は5996人で1割程度にとどまっており、若手人材が極端に少ない状況が見て取れる。

背景にあるのは若手人材の流出だ。建設系高校・大学の県内卒業者のうち、昨年度は半数以上が県外で内定を得た。
就職しても3年以内に辞める新卒者が全国的に3~4割に上り、県内も同様の傾向がみられる。

県内企業の若手経営幹部でつくる「やまぐち建設21の会」の中村欽光会長(49)は、若手人材が少ないことに「技術がベテランから若者に伝承されず、インフラ整備に影響が出かねない」と危機感を強める。
追い打ちをかけるのが「2024年問題」だ。来年4月から時間外労働の上限が罰則付きで設けられることになる。この影響で、1人あたりの労働量は減るため、業界が必要とする人材も不足することになる。

これを受け、業界では、昔ながらの印象として根強い「3K(きつい・汚い・危険)」から脱却し、今の時代に見合った「新3K(給与がいい・休暇が取れる・希望が持てる)」への転換を進めている。

県も「週休2日」の実現を目指す。毎月第2土曜だった公共工事現場の一斉休業を今年度から第2、4土曜に拡大。
週休2日を条件とする発注工事も対象の請負金額を1億円以上から5000万円以上に改定した。

このほか、今年度は若手の建設従事者と建設系学生の意見交換会を開くほか、就業体験の受け入れ企業を紹介する冊子を作成する。省力化につながるデジタル技術の導入支援も続けるという。

県土木建築部監理課は「若者が入りたいと思う業界になるよう支援したい」とし、県建設業協会の担当者も「非効率な業務の見直しや工期の十分な確保を通じて、業界イメージを向上させたい」と意気込みを語る。

◆2024年問題=2018年6月に改正された労働基準法など八つの法律、いわゆる働き方改革関連法が来年4月に建設業や運送業で適用される。
時間外労働(残業)はこれまで、労使が協定を結べば事実上の青天井だったが、原則で「月45時間、年360時間」などとする上限が罰則付きで定められた。