大阪市を廃止して四つの特別区に分割する「大阪都構想」は、昨年末で制度設計案が確定し、まもなく市民向けの説明会が始まる見通しだ。制度設計を話し合う「大都市制度(特別区設置)協議会」(通称、法定協議会)はこれまで31回行われたが、この期に及んで大阪都構想はまだ未消化な問題が山ほどある。その一つを提起する。

 法定協議会でほとんど議論されなかったが、大阪府内の四つの特別区は日本国内どこにも仲間のいない孤立した存在となる。大阪市を廃止して作られる4特別区の住民(現在の大阪市民)は、他の基礎自治体と連携のない「陸の孤島」に暮らすのだ。

■指定都市市長会から外れる

 現在の大阪市は政令指定都市なので「指定都市市長会」のメンバーであるが、特別区になれば当然ながらこの会には入れない。大阪市の財政局長、経済局長などを歴任した木村收・元大阪市立大学教授(地方財政論)は、早くからこの問題に警鐘を鳴らしていた。

 では指定都市市長会とは何をしている組織なのか。木村・元教授は「指定都市市長会は、昭和23年にできた五大市共同事務所から始まり、国に対し税財源の拡充運動を中心に活動してきた。毛利元就の『3本の矢』のように、国への要望に際し、自治体の団結は大きな力になる」と説明する。1975年(昭和50年)に、人口30万人以上の都市が一定規模以上の事業所に課す事業所税が創設されたことなどが、指定都市市長会の活動の成果だという。

■税は生き物、だから税制も常に変化する

 時代の変化に合わせ税制も変化してきた。木村・元教授は「税金は生き物だ。消費税がなかった時代は、外食や映画鑑賞に税金がかかり、自転車を持つのにも税金がかかった。どんな税が大きな財源となるのか、そのウエイトは社会の姿によって変遷する。地方自治体は税収が安定するよう社会の形に合わせて、常に国に税制改革を働きかけなくてはならない。地方自治体が訴えなければ、国は地方の税財源拡充のためにはなかなか動いてくれない」と自身の経験も踏まえて話す。

 指定都市市長会は大都市特有の課題を持つ仲間として団結し、国への訴えを連綿と続けてきた。大阪都構想で大阪市が廃止され、四つの特別区に分割されれば、4特別区の特別区長は指定都市市長会のメンバーではなくなる。税制改正をはじめとした行財政制度改革を国に訴える仲間から外れるのだ。

 全国市長会という組織もあり、これには東京都の特別区も参加しているので、大阪府内の特別区もやがて加入できるかもしれないが、市と特別区では行財政制度の仕組みが全く違う。木村・元教授は「全国市長会に入ったとしても、そのメリットは他市との情報交換程度にとどまるだろう」と予測する。

■4特別区は大阪府内に閉じ込められる

 

 大阪市から特別区になると、法律上、大阪市民が市税として払っていた税金がごっそり大阪府税になるので、特別区に残る税源は大阪市の時と比べ3分の1程度になる。特別区は大阪府から「財政調整交付金」という形で税収を分け与えてもらって、運営する仕組みだ。大阪府からの財政調整交付金が乏しく、特別区が財政難になることもありうる。

 そうなった時、特別区が国に助けを求めようにも、大阪都構想のために作られた「大都市地域における特別区設置に関する法律」(大都市法)の第11条では、この財政調整に関し政府に意見を申し出るには「特別区と大阪府の議会の議決を経なければならない」と定められている。

 大阪府内の4特別区は、指定都市市長会のように国に直接、税制改正を要望することができないのはもちろん、大阪府との財政調整の変更を訴えるのですら、「大阪府議会の議決」が必要なのである。まさに大阪府内に隔離された状況に陥る。

 さらに言えば、4特別区の人口は大阪府全体の3割程度なので、府議会でも特別区選出の議員は少数派。特別区のための議決を得るのは容易ではない。

■金持ちの真似をしても金持ちにはなれない

 ちなみに、東京都の特別区23区も都内に隔離されているが、企業が集積する首都なので税収的に各段に豊かであり、国に「何とかして下さい」と訴え出る差し迫った必要性がない。東京都と大阪府は、どちらも大都市だが税収は全く違う。大阪市民が「特別区になれば東京のように発展する」と思っているとすれば、それは「金持ちの真似をしたら金持ちになれる」という勘違いである。



1/11(土) 10:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/koudaizumi/20200111-00158416/