(ブルームバーグ): スマートフォンゲーム内でアイテムが当たる電子くじ「ガチャ」からの収益確保が難しくなってきている。開発にかかる時間や費用が増える中、ユーザーのコンテンツ消費に供給が追いつけないからだ。

ディー・エヌ・エー(DeNA)は今期(2020年3月期)、05年の株式上場以来、初の通期赤字となる見通し。守安功社長は「ゲーム事業は非常に稼ぐ力が弱くなっている」と話した。ガチャの草分け、グリーもゲーム内での収益が低下。ドラゴンクエストウォークが好調なコロプラも10−12月期の売り上げは前四半期比で横ばいだった。

匿名で取材に応じた複数のゲーム開発会社の幹部は、ゲームの品質に対する期待が上がっていると説明する。ゲーマーの要求に応えるため、提供されるキャラクターは複雑で洗練されたものになっており、以前のようなペースでコンテンツを作り出していくのは困難になってきているという。

ガチャが導入された2010年以前は、スマートフォンは今ほど普及しておらず、キャラクターやアイテムの質はそれほど求められなかった。ゲーム会社は毎月、供給する新たなアイテムで収益を増やしてきた。しかし、スマホの普及と進化によって消費者は、高品質なアニメーションや、声が一緒になったキャラクターやアイテムを求めるようになってきている。

開発の現場では、大規模なチームを率いることができるマネージャーが不足。キャラクターの立体的なモデルや動きについては外部発注が増え、委託先とのやり取りなどに手間や時間かかっている。納品されたキャラクターをゲームに実装するための人材も足りていない。

東京拠点のコンサルタント、カンタンゲームズのセルカン・トト代表は「すでに高いガチャの値段は上げられない。だが新たなアイテムを作るためのコストは上昇し続けている」と述べた。

グラフィックにこだわったゲームの場合、追加できるアイテムは月に数点。消費額は以前と比べ減少せざるをえない。

ソニーの「Fate/Grand Order(フェイト・グランドオーダー)」の有名ゲーマー、だいご氏は以前、キャラクターの入手に月間50万円使ったこともあったという。だが「最近ではだいぶ減り、月課金額が1万円行かないこともあった」と述べた。

米調査会社アップ・アニーによれば、フェイト・グランドオーダーは19年の収益ランキングで首位。ただ十時裕樹最高財務責任者(CFO)は会見で、収益はピークを越したとの見通しを明らかにしている。

エース経済研究所の安田秀樹シニアアナリストは、ガチャに頼った収益モデルは限界に来ていると分析する。開発には資金とスピードがますます必要になり、「日本の会社が米中のライバルについていくのは非常に困難だ」と話した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200227-50800004-bloom_st-bus_all
https://i.imgur.com/qCcxKRU.jpg