読売新聞 5/16(月) 13:57

 客が店や企業に悪質なクレームや不当な要求をする迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の被害が、自治体にも広がっている。岐阜県内自治体の労働組合などでつくる県地方自治研究センター(岐阜市)の調査では、県内の自治体窓口で職員がカスハラに神経をすり減らしている実態が明らかになっており、職員の安全確保などの対応策が求められている。(野村順)

 「気にくわないことがあると窓口に来て長時間居座る市民がいる」「明らかに市民側の問題なのに『市が何とかしろ』と言われ、対応に困ることも増えた」

 同センターが2020年10月、会員の県内23団体の職員628人を対象に行ったアンケートでは、こんな声が寄せられた。センターは自治労県本部などを会員とする研究組織で、調査では、職場の実態や課題、悩みなどを記述式で尋ね、約32%にあたる203人が回答。クレームを寄せる住民に対応することの難しさやカスハラ被害、「公務員バッシング」の回答は20例(同様の回答は1例としてカウント)に上り、長時間の苦情電話や窓口対応で本来の仕事ができなくなるなど、職員が様々なカスハラに悩まされている実態が浮き彫りになった。

 住民のクレームには行政の課題や不備を指摘するようなものもあるというが、同センターは、カスハラが生じたり、その対応に悩んだりする背景として、かつてより権利意識が高まり、声を上げる住民が多くなったことや、行政改革で職員の数が少なくなっている事情もあると分析する。

 調査では、「対応に注意が必要な人物の情報共有強化を」「専門に対応する職員が必要」「駄目なものは駄目と言えるような行政側の環境整備が必要」といった意見も寄せられた。

 かつて大垣市役所で窓口対応をしていた子安英俊・自治労県本部中央執行委員長(53)は「マンホールの蓋を投げつけてきた人もいた。毅然(きぜん)と接し、組織として対応することが必要だ」と話す。また、同センター理事長で今回の調査に関わった岐阜大の富樫幸一特任教授(65)(経済地理学)は「人員がぎりぎりの部署や1人で窓口対応している場合はカスハラが起きやすい」と指摘。クレーム対応のマニュアル整備や研修の開催、弁護士に対応を任せる仕組み作りなどが必要だと訴えている。

病院職員含め5割弱被害 全国調査
 自治労が2020年に全国の自治体や病院などの職員を対象に実施した調査では、回答した1万4213人のうち5割弱がカスハラ被害を訴えた。

 過去3年間のカスハラ体験の有無については、42%が「時々」、4%が「日常的」と回答し、「自分ではないが、職場で受けた人がいる」は30%。具体的な被害(複数回答)では「暴言や説教」「長時間のクレームや居座り」「複数回に及ぶクレーム」が目立ち、影響(同)では、「出勤が憂鬱(ゆううつ)になった」が最多の57%で、次いで「仕事に集中できなくなった」が44%だった。

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