※統一まであと1年

 北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長が2週間以上、公の場に姿を見せていない。政治的に重要な式典に出席せず、心臓血管系の手術を受けたとの報道もあることから、金氏が執務遂行不能状態に陥っている、または死亡したとの臆測さえ流れている。

 韓国と米国はいずれもこうした臆測を打ち消しているが、北朝鮮国営メディアは金氏の名前でメッセージを発信するだけで、動向に関する具体的証拠はない。

 もしも正恩氏が死亡した場合、同氏の祖父で、北朝鮮建国の父とされる故金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席から3代続く金政権に何が起こるのか。

■正恩氏の死を世界はどのように知るのか?

 過去の例から見ると、北朝鮮の最高指導者が死亡した場合、最初の兆候となるのは国営テレビでの特別放送による発表だ。女性アナウンサーが黒い服を着ていれば、正恩氏が死亡したと考えられる。

 北朝鮮の重要な出来事を何十年にもわたって伝えてきた女性アナウンサーに、李春姫(リ・チュニ、Ri Chun-Hee)氏がいる。1994年の金日成氏死去、2011年の金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記死去は、李氏が黒い服を着用して伝えた。

■金政権は続くのか?

 北朝鮮の正式な国名は「朝鮮民主主義人民共和国」だが、実際には共和制ではなく、1948年の建国以来、金一族が支配してきた。

 朝鮮労働党は、初代最高指導者の金日成氏が日本統治時代の朝鮮半島(Korean Peninsula)で抗日武装闘争を率いたこと、さらにその後の朝鮮戦争(Korean War)時代に米軍主導の国連(UN)軍との戦いを率いたことを根拠に金政権の正統性を主張している。

 朝鮮労働党の支配は社会の隅々にまで及んでおり、金氏が死亡した場合も何らかの民衆蜂起が起きるとは考えにくい。

■後継者争いは?

 金正恩氏には3人の子どもがいるとされるが、第二子が娘としか知られていない。いずれにせよ3人の子どもは、後継者となるにはまだ幼すぎる。

 正恩氏の妹で最も親しい助言者でもある金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo-Jong)氏は、朝鮮労働党の第1副部長で、金一族の中で現在最も存在感があるが、封建的な北朝鮮社会で女性指導者は例がない。

 異母兄の金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏は、2017年にマレーシアのクアラルンプール国際空港(Kuala Lumpur International Airport)で神経剤を顔に塗られて暗殺された。この事件については、大半のアナリストが北朝鮮による殺害だとみている。

 一方、実兄の金正哲(キム・ジョンチョル、Kim Jong-Chul)氏は、英ミュージシャンのエリック・クラプトン(Eric Clapton)氏のファンだということが知られているだけで、政治的野心はないとされている。

 正恩氏の妻の李雪主(リ・ソルジュ、Ri Sol-ju)氏は、これまでの最高指導者夫人よりも公の場で存在感を放っており、2018年にはファーストレディーに相当する「女史」の肩書が付与された。

 故金正日総書記の異母弟で、正恩氏の叔父に当たる金平一(Kim Pyong Il)氏は長年にわたって東欧諸国で北朝鮮大使を務めていたが、昨年駐在先のチェコから呼び戻されて以降、現在に至るまで消息が聞こえていない。

■金一族以外の後継者の可能性は?

 正恩氏が後継者を指名したとは伝えられていないが、ナンバー2として公認されているのは、朝鮮労働党の意思決定機関である政治局の委員で、最高人民会議(国会に相当)常任委員長も務める崔竜海(チェ・リョンヘ、Choe Ryong Hae)氏だ。

 同氏の権力は強大な上、婚姻によって金一族の親族となっている可能性もある。正恩氏の妹の与正氏が結婚しているかどうかの確認は取れていないが、韓国メディアは過去に匿名筋の情報として、与正氏の夫が崔竜海氏だと報じたことがある。

https://news.livedoor.com/article/detail/18186467/
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