歴史ある遊園地の閉園が相次いでいる。2020年3月の「みさき公園」(大阪府岬町)、同年8月の「としまえん」(東京都練馬区)に続き、今月30日には福岡市東区の「かしいかえん シルバニアガーデン」が65年の歴史に幕を下ろす。いずれも大手私鉄が経営し、バブル崩壊から00年代の遊園地淘汰(とうた)の時代も生き残ったが、入園者数の減少傾向に歯止めがかからず、かしいかえんの場合は新型コロナウイルスの感染拡大がだめ押しとなった。

「もっと前から何か…」後悔も
 かしいかえんを運営する西日本鉄道が今年3月、年内での閉園を発表して以降、園内は週末を中心に別れを惜しむ家族連れらでにぎわっている。ショーを担当する黒田裕悠美(ゆうみ)さん(30)は「県外から駆けつけてくれる方もいる。昨年はショーが始まる時間に会場にお客さんが誰もおらず、中止する日もあった。人を呼び込むために、もっと前から何かできなかっただろうかという後悔もあり、複雑な気持ち」と話す。

 かしいかえんは西鉄の前身の会社の一つ、博多湾鉄道汽船が1939年に開いた「香椎チューリップ園」をルーツに、チューリップやバラなど季節の花々を楽しめる「西鉄香椎花園」として56年にオープンした。各地で遊園地建設が相次いだ60年代に入ると、観覧車やジェットコースターなどのアトラクションも導入し、ピークの86年度には約57万人が訪れた。

 しかし、少子化やレジャーの多様化、施設の老朽化などもあり、90年代後半以降、入園者数の減少傾向が顕著になった。09年には森の動物たちがキャラクターで、女の子に人気の「シルバニアファミリー」をテーマにした西日本初の遊園地に大型リニューアルするなど、てこ入れも図ったが、慢性的な赤字から脱却できなかった。

 追い打ちをかけたのが新型コロナの感染拡大で、20年度の入場者数は前年度(27万人)から一気に半減。ピーク時と比べると4分の1以下の13万人にまで落ち込んだ。西鉄は本業の鉄道やバスのほか、ホテルなどもコロナの影響を受けており、21年3月期の連結決算は22年ぶりに最終赤字に転落。不採算事業の遊園地からの撤退を決断した。
(中略)
 鉄道会社が沿線の活性化を目的に遊園地やテーマパークを運営するビジネスモデルは戦後全国に広がり、バブル期には各地に新しい娯楽施設が誕生した。

 しかし、バブル崩壊とともに、体力のない新興の施設は次々と撤退。ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどの大型テーマパークに人気が集中する一方で、昔ながらの施設は少子化や娯楽の多様化などの影響をもろに受けた。2000年代になると、全国的に名前を知られた宝塚ファミリーランド(03年)やエキスポランド(09年)なども相次いで閉園に追い込まれ、17年末にはバブル期にオープンした北九州市のスペースワールドが姿を消した。

 その後も遊園地を取り巻く環境は厳しいままだ。20年3月に閉園した「みさき公園」は日本で2番目に古いジェットコースターや動物園などを備え、京阪神地区で長年親しまれた遊園地だが赤字が続いていた。1世紀近い歴史があった「としまえん」も、ピーク時(1992年度)に390万人いた入園者数が112万人(18年度)にまで減少。それぞれ経営母体は南海電鉄、西武鉄道という大手私鉄だが、事業継続は困難と判断した。

 コロナ禍による経営の更なる悪化も懸念される。帝国データバンクの調査(21年7月)によると、遊園地やテーマパークなどを運営する235社のうち約半数の116社は20年度決算が前年度より悪化し、うち14社は40%以上売り上げが減ったと回答した。【山口桂子】

しばらくは減収傾向続く
 高橋一夫・近畿大経営学部教授(観光マーケティング)の話(略)

毎日新聞 2021/12/11 17:36
https://mainichi.jp/articles/20211211/k00/00m/040/162000c