秋葉原(東京都)とつくば(茨城県)を最短45分で結ぶつくばエクスプレス(TX)。2005年開業で全駅にホームドア、踏切なしという高い安全性が売りだ。沿線開発も進み、乗客数も右肩上がり。その成長著しい鉄道に、今ほころびが見え始めている。

5月25日、柏たなか駅でオーバーランが発生。TXは列車を決まった位置で正確に停止させるための専用装置を導入している。運転士は列車を手動モードに切り替えていたことを忘れて運転。自動停止しないことに気づき、非常ブレーキをかけたが間に合わなかった。

■この3年で3度目のオーバーラン

オーバーランはこれが初めてではない。今年1月に新御徒町駅、2015年5月に南流山駅でも発生している。原因は三つともまったく同じで装置の切り替えミスだ。

TXを運行する首都圏新都市鉄道は再発防止策として「基本動作の励行の再徹底」を掲げるが、同じトラブルが続く以上、有効な手だてとはいえない。

鉄道事業者には、列車の衝突や脱線といった事故やそのおそれがあると認められる事態を国土交通省に報告する義務がある。TXは開業以来、報告はゼロだ。

しかし、報告義務のないトラブルや社員の不祥事が駅構内も含めると2016年に10件起きている。今年も7月末までに6件もある。

これらはいずれも同社HP上で確認したものだ。首都圏のある鉄道会社の社員は、「職場の掲示板に注意喚起の意味で各社のトラブルや不祥事例が掲載されるが、TXの多さは異常」と驚きを隠さない。

なぜ、トラブルが続くのか。背景には、乗客の急増に会社の体制が追いついていないことがある。

■乗客急増に社内体制の整備が追いつかず

TXの乗客数は開業から10年で2倍以上に拡大するという急激な増加を続けている。

ところが、開業初年度の2005年と現在を比較すると、駅職員数は当初の207人から2年目に225人に増えたものの、その後は1人増にとどまる。

ほかの鉄道会社では朝夕のラッシュ時に警備会社やアルバイトなどが乗客整理を補助するが、同社は駅職員のみで対応している。

昨年11月、秋葉原駅のトイレで首をつった状態の客が発見された。その際、駅員が構内を巡回していないのに、したことにするという虚偽の報告が発覚。後の調査では過半数の駅で巡回前にあらかじめ巡回済みと記録していたことが明らかになった。

背景には、巡回時間にほかの業務が重なりかねないという事情がある。

「乗客対応で事務室に誰もいない時間帯もある」と、ある社員は明かす。駅員は巡回など定常業務の合間に改札口での精算、車いす利用者の乗降補助などの業務を行う。乗客増に合わせ駅員を増やさなければ、業務の繁忙度は増す一方だ。

2015年には労使協定を超えた時間外労働があったなどとして上野労働基準監督署から是正勧告を受けている。だが、社員からはいまだに「人手不足で残業や休日出勤が常態化している」との不満が漏れる。労働環境の抜本的な改善にはつながっていないようだ。

(以下省略、つづきはウェブで!)

http://toyokeizai.net/articles/-/185098