“再劣化”インフラ維持に新たな課題「早急な検証が必要」
2018年12月2日 18時23分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181202/k10011731981000.html

橋やトンネルなどのインフラ維持に新たな課題です。
ひび割れなどが見つかり、一度は修繕された橋などを専門家が調査したところ、同じ箇所が再び劣化する「再劣化」が、少なくとも100件以上起きていることが分かりました。中には、わずか数年のうちに再劣化したケースもあり、専門家は「点検や修繕の方法が不適切なケースがあり、早急な検証が必要だ」と指摘しています。
岐阜大学の国枝稔教授の研究グループは、岐阜県内を中心に、ひび割れなどが見つかって一度は修繕された橋などについて、その後の状況を5年かけて調査しました。

その結果、修繕した箇所に再び、ひび割れなどが発生する「再劣化」が少なくとも128件起きていることがわかりました。

このうち、岐阜県内の14の橋などでは、想定よりかなり早く劣化が進んでいて、修繕からわずか2年で再劣化したケースもありました。

再劣化は、鉄筋などを腐食させる塩分が含まれた凍結防止剤を使用する地域に多い傾向があり、周辺の環境などを考慮した適切な修繕が行われておらず、劣化が早まった可能性が高いということです。

こうした再劣化は、各地で発生している可能性があるものの、詳しい実態は分かっていません。

国枝教授は「実態の把握を進めたうえで、技術的な分析を行い、適切な修繕方法を検証する必要がある」と指摘しています。

不適切な修繕が早い再劣化の原因に
不適切な修繕が、想定より早い再劣化の原因になっていたケースがあります。

岐阜県高山市にある長さおよそ60メートルの橋は、側面のコンクリートに数多くのひび割れが見つかったため、平成22年に表面を5センチ程度はぎ取って、上からモルタルで覆いました。

しかし、わずか2年後の点検で、修繕した場所に再びひび割れが見つかりました。その後も劣化は進行していて、取材した先月の時点でひび割れは一面に広がり、幅も広がっていました。

調査した岐阜大学の国枝稔教授によりますと、凍結防止剤の塩分を含んだ水が染み込んだことで、内部の鉄筋の腐食が進んでいる可能性があるということです。

使用したモルタルでは、水の浸透を止めることができないため、より強度の高いモルタルを使うなど、現場の状況を考慮して修繕を行う必要があると指摘しています。

現時点では、この橋の安全性に問題はないということですが、国枝教授は、ひび割れを放置するとコンクリートが落下したり、強度が低下したりするおそれがあるとしています。

点検で問題見抜けないケースも
点検で問題点を見抜けなかったことが、再劣化につながったケースもあります。

富山市にある昭和47年に建設された長さ69メートルの橋は、道路と橋を接続する金属製の装置が壊れ、数センチの段差が生じました。
タイヤがパンクするおそれもあり、3年前から通行止めになっています。

この橋では、平成20年に市が委託したコンサルタント会社の点検で段差が見つかり、平成22年に装置を交換しました。

ところが、3年後の点検で、再び段差が見つかりました。市が改めて調べると、橋を下から支える装置が腐食して壊れているのが見つかり、これが段差の原因だったことがわかりました。

富山市の植野芳彦建設技術統括監は「結果として点検に不備があったと言わざるをえない。正しく点検しないと修繕の判断を間違ってしまい、財政的な負担が増す懸念もある」と話しています。

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