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持ち込まれた生地を前に「マスクを使ってくれればうれしい」と話す前田冰冰さん=静岡市葵区で


 新型コロナウイルスの影響でマスクの需要が高まる中、静岡市葵区で洋服リフォーム店を営む中国出身の前田冰冰(ビンビン)さん(39)は、生地を持ち込めば無料で布マスクを仕立てるサービスを始めた。日本人へ恩返しができればと、すでに百二十枚以上を製作した。

 遼寧省瀋陽市に生まれ、裁縫が得意な祖母の影響で省内の縫製会社に就職。中国や日本の企業を行き来して腕を磨き、日本人男性との結婚を機に二〇一四年から静岡市で生活を始めた。

 市内の服リフォーム店で働いた後の一七年に独立。通常料金は他店の三〜五割ほど安いが、子どもや障害者向けにはさらに割り引き、中高生の制服や作業着も15%引きにするなど、地域に寄り添ってきた。

 冰冰さんは、新型コロナが中国で拡大したことから非難も覚悟したが、周囲から掛けられたのは「実家は大丈夫か」など、中国にいる家族まで心配するねぎらいの言葉だった。「こんなときこそ助け合いが大切」と、マスク作りを始めた。

 持ち込まれる生地の性質ごとに縫い方や重ね方を工夫し、多い日には一日二十枚を作る。依頼に訪れた近くの自営業梅村秀一さんは「最近よく布マスクの作り方紹介を目にするが、ミシンも使えずこうしたサービスはありがたい」と話す。

 冰冰さんは、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩が好きという。「自分の技術が、いつもよくしてくれる日本の人のためになればうれしい」 

(五十幡将之)

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